九尾の狐は、中国神話の瑞獣と言われている兆しの良い妖怪。
九尾の狐を見たものは、その後繁栄すると言われている反面、傍若無人な王には破滅をもたらすとも。
九尾の狐伝説の数々を分かりやすく解説しながら、4つのお話を紹介します。
また、九尾の狐の能力、本来の目的なども紹介!
悪者にされがちな九尾の狐。
本当は凄い神様なのかも。
九尾の狐とは?
九尾の狐とはしっぽが9個ある、中国神話に出てくる伝説上の生き物で妖怪、霊獣です。
九尾の狐は瑞獣(ずいじゅう)と呼ばれる、良い事が訪れる前兆として現れる生き物の一つ
鳳凰や龍も珍獣です
中国の古物には、天界より遣わされた神獣とも言われ、優れた王の時代に出現すると記されています。
優れた王には守り神として、繁栄が見込める兆しでもある九尾の狐。
その反面、美女に形を替えて、国を破滅させ、世の中を恐怖の世界に陥れる力も備えています。
それが、九尾の狐伝説で伝えられる数々の悪女伝説。
王の妻となり、国を滅ぼしてきた美女たち。
それが「九尾の狐」だと、今の時代では言われているのです。
では一体どんな能力なのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。
九尾の狐の能力
- 繁栄をもたらす力
- 破滅させる力
この両極端な2つの能力があると言われています。
九尾の狐は、漢王室の守り神とされていました。
九尾の「九」は子孫繁栄を示し、陽数(奇数)を持った瑞兆(=吉兆)を示すため、幸運の霊獣。
繁栄した時代の王には、守り神としては最強の運を与える九尾の狐。
但し、九尾の狐は徳のある君主を選びます。
徳がない君主の場合には革命を促すそうです。
いわば反乱のようなもの。
反乱をして、王の身を亡ぼすように仕向けるのかもしれません。
そして最後には国が破滅。
そのため別名「狂獣」とも呼ばれます。
九尾の狐は
- 繁栄をもたらす守り神
- 破壊を導く魔物
という二つの顔を持っている瑞獣。
今までの歴史では、破滅させてきた話の方が多いため、いつのまには九尾の狐は「悪者」というレッテルを貼られました。
どちらにしても、国を動かす能力を持っている神の使いであることは間違いありません。
九尾の狐伝説
九尾の狐には、様々な伝説が残されています。
中国の物語の中では、九尾の狐は絶世の美女に変身し、人間を惑わす悪しき存在とも紹介されています。
なぜ美女なのかは、あの人はまさしく九尾の狐だろうと言われる女性が皆、稀にみる美女だからです。
九尾の狐だと言われる人達の共通点として
- 絶世の美女
- 人を惑わす力
を持っているということ。
これらから、歴史に残る悪女は皆「九尾の狐」だと言われ、実際に退治した話も付随しています。
中国の歴史では
- 殷の妲己(だっき)
- 天竺の華陽夫人
- 周の褒姒(ほうじ)
日本の歴史では
- 玉藻前(たまものまえ)=藤原得子
が、九尾の狐だとされています。
それぞれの伝説を詳しく解説していきます
殷の妲己(だっき)
妲己は、殷の時代に民を地獄に陥れた女性で、殷の王様の妾です。
民に与えた恐怖は数知れず。
伝説も多く、悪女として名を馳せている女性です。
残酷な処刑方法や、酒池肉林と言う快楽を徹底して求めた楽園を作ったことでも有名な人。
その姿は稀に見る美女で、人々を惑わす力を持っていたのだそう。
妲己の死後、妲己をモデルにした物語が数々と作られ、その中で妲己の正体が実は九尾の狐だったという話が誕生。
そして殷の紂王を操り、悪徳政治を行った妲己は、いつのまにか九尾の狐だと言われるようになり、その後歴史に残る悪女の中でもトップクラスの悪女ということで、九尾の狐といえば妲己と言う認識が生まれました。
妲己伝説や、残酷な処刑の種類・快楽を求め続けた乱交の様子はこちらから↓
ちなみに九尾の狐伝説の発端は、妲己だと言われています。
その後も数々の悪女が誕生しますが先ほどの悪女はいなかったといいます。
※妲己は実在する人物です。
天竺の華陽夫人
こちらはインドのお話。
この伝説は、実話ではなかったと言われています。
インドの王様と獅子が交わり、生まれたのが斑足太子(はんそくおうじ)
足に斑点(はんてん)があったことから、斑足太子(はんそくおうじ)と名付けられたそうです。
斑足太子(はんそくおうじ)は、1000人の王の首を取ろうとします。
しかし1000人目の普明王という王によって、今までの行いを反省させられ、その後出家します。
この行いを裏で糸を引いていたのが、妃である華陽夫人と呼ばれる女性。
これが、九尾の狐が化けた美女だったのです。
そして斑足太子が王になると、千人殺させるよう仕向けたのです。
斑足太子はせっせと首を取るべく、王達の首を取ります。
あるとき、斑足太子が狩りに出かけました。
狐が寝ていたので矢を打つと、キツネの頭をかすめましたが、びっくりした狐はそのまま逃げてしまいました。
屋敷に戻ると、華陽夫人が頭を怪我しています。
インドで有名なお医者さんが華陽夫人を診察したところ、華陽夫人の正体は狐だと見破ってしまいます。
なんとかバレないように繕えつつも、結局インドの名医者が持ってきた金鳳山の薬王樹の枝で正体がばれて、北の空に飛び去っていくというお話です。
よくよく考えると
- 斑足太子は獅子の子
- 華陽夫人は狐
どちらも動物であることに変わりない。
インドはバラエティ豊かなラブコメディを作ったりもするので、九尾の狐の話づくりもユニークすぎます(笑)
妲己として悪事を働いていた九尾の狐は、約700年後にインドに行ってきて華陽夫人にになったというお話。
周の褒姒(ほうじ)
褒姒(ほうじ)は周の幽王の2番目の后。
美貌によって王を惑わせ、西周を破滅に導いた、亡国の美女として有名。
ただし
- 殷の妲己
- 架空の人物・華陽夫人
に比べると、人を殺すような残虐なことをしたわけではありません。
王を惑わせて周の国を滅ぼした原因とされている褒姒ですが、周の12代目国王・幽王に無理やり嫁がされ、一切笑わなかった褒姒に対し、なんとか笑ってもらおうと自分の部下たちを騙したのは、幽王自身です。
幽王の時代は、狼煙(のろし)を上げると、敵が攻めてきたという合図であり、王である幽王の王宮に集まらなければいけないというルールがありました。
ある時間違って狼煙を上げてしまい、集まった将軍たちが落胆するのを見て褒姒は、初めて幽王の前で笑顔を見せます。
ほうじは幽王に嫁いでから、一度も笑わなかったそうです。
そのため、ほうじの笑顔を見て大喜びしたおバカな幽王は、その後何回も嘘の狼煙をあげさせます
そしてだんだん信用を失った幽王は、本当の敵が攻めた時に狼煙をあげても、誰も集まってくれませんでした。
幽王はあっけなく殺され、褒姒(ほうじ)は姿形なく消え去ったと言います。
殷の妲己や華陽夫人に比べると、ただ笑ったと言うだけの褒姒。
その姿は稀に見る美女で、幽王は彼女にメロメロだったのだとか。
1番目の妃を皇后の位から降ろし、妲褒姒(ほうじ)を正式な皇后にまでしてしまった幽王。
もちろん王位の座をつかせるのは、褒姒(ほうじ)の子供。
そして、褒姒(ほうじ)に溺れた幽王は破滅。
どう見ても幽王がおバカとしか思えませんが、王が政治に見向きもせず、女に狂って国を破滅させたその原因が褒姒ということで悪女にされてしまいました
また褒姒は、出生と死に謎があると言われています。
そのような謎のいきさつから、褒姒(ほうじ)は九尾の狐だと言われたのです。
褒姒の生まれやいきさつ、幽王の前で笑わなかった理由などこちらで詳しくまとめています↓
※褒姒は一応実在する人物です。
玉藻前(たまものまえ)
玉藻前は、鳥羽天皇が寵愛した美女が実は九尾の狐だったという、物語の主人公・九尾の狐の名前です。
鳥羽天皇が、ある美女を自分の妻にしてから体調が悪くなり、病気ばかりするようになってしまいました。
おかしいと思った陰陽師が調べてみると、その妻の正体は狐。
陰陽師が退治するとキツネは尻尾を巻いて逃げ出し、栃木県にある那須高原へ逃げますが、今度はそこで毒石に姿を変え、人々を殺し続けるために、ある僧侶が封じ込めたというのが玉藻前のお話です。
物語なので、玉藻前そのものは架空の人物ですが、玉藻前を書くときにモデルとした人物がいました。
それが平安時代の鳥羽天皇の皇后・藤原得子。
得子は、国で一番の権力を握るために、様々な画策を施し、見事頂点につきます。
妾として入った王室で、鳥羽天皇の本妻を追い出し、自分が皇后となります。
我が子を天皇にするべく、本妻の子供たちをことごとく失脚させ、策略を実行させます。
王室では得子ほどの権力を持つ者は他にいなくなり、鳥羽院のほとんどの領地も得子のものとなります。
自分の実の子供は17歳で病死してしまいましたが、それまでに養子にしていた子供を天皇に就けます。
夫である鳥羽天皇が死ぬと、2つの反乱を起こされますが、全て勝利します。
得子の死後、鳥羽天皇が得子の為にお墓を用意しておいてくれたものを、得子は高野山に骨をうずめてほしいと言い、女人禁制の高野山であるにも関わらず、埋葬させます。
得子は44歳で亡くなり、その後得子をモデルに物語にしたのが「玉藻前物語」です。
得子は、自分が一番でないと気が済まないタイプでした。
それはきっと、得子の父親が子供の頃から得子を溺愛し、何でも一番にさせてきたからでしょう。
玉藻前のモデルとなった藤原得子が、鳥羽天皇の時代に何をしたのかはこちらで詳しく解説しています↓
九尾の狐と那須高原にある殺生石は繋がっている!?
栃木県那須高原にある殺生石には、九尾の狐伝説があります。
殺生石の詳細や体験談、伝説についてはこちらで詳しく解説しているのでチェックしてくださいね!
まとめ
狐は悪さをするという先入観からか、そのような物語がとても多いですよね。
世の中をひっくり返すような極悪非道な行いを行った皇后達は、正体が狐だったから仕方ない、という解釈に思えてなりません。
そりゃきつねも怒ります。
傍若無人な振る舞いをして民を苦しめ、国を発展させるどころか自分たちだけ満足していればいいと言う自分勝手な歴代の王たち。
奥様が悪女なのは、自分自身の鏡だからではないでしょうか。
狐よりも怖いのは、人間。
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